2025年4月の安値からS&P500指数は26%以上反発しました。

しかし、第3四半期に入り、雇用統計の弱さや関税によるインフレ懸念から、市場では「米国株の強気相場はそろそろブレーキを踏むのではないか」という見方が広がっています。

 

Zentara Exchange チーフ・インベストメント・オフィサーの水野修矢氏は、第3四半期に米国株が小幅な調整を迎える可能性は確かにあるが、それは「強気相場の終焉」ではなく、正常な一時停止に過ぎないと指摘しています。

 

「株式市場は悪材料の中で底打ちします。2025年4月の安値はすでに確定しているため、第3四半期の調整は短期的な修正となり、再び仕込みを行う好機です」

 

一、注目すべき2つのセクター

水野氏は、以下のような銘柄に注目することを推奨しています。

 

⑴高い価格転嫁力を持つ大手AIアプリケーション企業——コストの上昇を効果的に顧客に転嫁できる企業のことを指しています。

 

⑵金利に左右されにくい優良大型株——高金利環境でも安定した成長を維持できる企業のことを指しています。

 

これらの企業は短期的な変動に強く、長期的にはファンダメンタルズの改善からも充分な恩恵を受けることができます。

 

二、今回の強気相場を支えたロジック:業績修正+サイクルの転換点

まずは、相場の起点を振り返ってみましょう。

 

2025年4月、トランプ政権が「相互関税」政策を発表し、市場の不確実性がピークに達しました。

 

当時、S&P500構成銘柄の平均下落率は30%に達しており、市場が景気減速懸念を事前に消化していたことが窺えます。

 

それと同時に、2022年から続いた「ローリング・リセッション」が終焉を迎え、企業はコスト削減と効率化を通じて利益率を回復させました。

 

それ以外に、以下の好材料による影響も受けています。

 

・AI技術の急速な普及

 

・成長促進型の新税制

 

・ドル安→輸出企業が恩恵を受けた

 

これらが中長期の強気相場を支える基盤となっています。

 

三、第3四半期に迎える反落:「終わり」ではなく「修正」

第3四半期の調整はトレンドの反転ではなく、健全な調整であると水野氏は指摘しました。

その主な原因は以下の通りです。

 

①関税の影響が徐々に顕在化(遅れを伴う)

在庫が切れると、原材料コストの上昇が企業決算に反映され始めます。

 

→価格転嫁力の弱い消費財企業に圧力がかかる。

 

それに対して工業やB2B企業は比較的影響を受けにくく、コストを効果的に転嫁することができます。

 

②FRBの政策判断が難航

直近2ヶ月間の非農業部門雇用者数は、コロナ以来最弱のパフォーマンスを見せています。

 

債券市場は、9月に利下げが行われる確率を88%と予想しています。

 

しかし、関税によるインフレ懸念から、FRBは利下げを先送りする可能性があります。

 

この「景気減速+金利据え置き」という局面は、第3四半期(季節的に弱い時期)に5~10%の下落圧力をもたらす恐れがあります。

 

四、短期的なリスク要因(注目すべき変数)

水野氏は、短期的かつ潜在的なリスクとなる要因を3つ挙げました。

 

①ドルの流動性が鈍化→資金逼迫

 

②企業業績の修正ペースが鈍化→投資家心理の弱体化

 

③米10年債利回りが4.5%を突破→市場評価が圧迫される

 

五、長期的なシナリオは変わらない:利下げサイクルは依然として訪れる

水野氏は「利下げが行われるタイミングは変わるかもしれませんが、インフレ圧力の緩和や労働市場の継続的な冷え込みを背景に、2026年に利下げサイクルが始まる可能性は依然として高いです」と述べています。

 

過去の経験からすると、株式市場は金融政策の転換を先取りして動いていくので、金融緩和が確認されれば反発は速いと考えられます。

 

六、バリュエーションは妥当、バブルのリスクは高くない

 

現在、S&P500のPERは高めですが、米10年債利回りが4.5%以下であれば、株式リスクプレミアムは安全水準を維持することができます。

 

「市場は永遠に上昇する訳ではないし、一つのシグナルで全てが反転する訳でもない。何より重要なのは、調整の背後にあるロジックを見極めることだ。そうしてこそ、反落相場におけるチャンスを掴むことができる」——水野修矢